Project story

05

レ・ジェイドクロス
千代田神保町

大正時代から現存する、
歴史的建造物の増築プロジェクト。

常識を打ち破り、
理想を追い求めた先にあるのは、
文化の継承と都市居住の新たな可能性。

Members

清水 彩矢Shimizu Saya
首都圏建築企画部 首都圏建築企画グループ
建築企画3課 スタッフ
2019年度入社

First

#01
歴史的建造物を、保存しながら増築する。
前例のないプロジェクト始動。

都心の中枢、東京都千代田区神田神保町。この街に悠然と佇む東方学会本館は、「千代田区景観まちづくり重要物件」に登録され、大正時代から現存する歴史的な建造物だ。この東方学会本館が所有し、借地していた隣接する不動産の解体に伴い、今回の増築プロジェクトがスタートした。歴史的建造物を保存しながら、現代の建物を増築する。日本では前例のないプロジェクトだった。プロジェクトのメイン担当は、入社3年目の清水。都心の高級物件、オフィス複合型、そして増築計画。そのすべてが初めての経験だった。最初は恐怖に似た感情があったが、それでも神保町に抱く、特別な感情が優った。学生時代、神保町へ6年通っていた清水は、「ここでしかできないもの」をつくるため、全身全霊でプロジェクトに挑む。

Research

文化と知性に溢れたアカデミックな街、
神保町。

神保町は本の街として名高い。街のリサーチを開始した清水は話す。「昔から大学が多い地域で、学生同士が本の貸し借りをしていた名残から、様々な書籍が集まってきて、本に関わる店が増えていったようです」。周辺には古本のみならず、専門書や新書を扱う多種多様な書店が立ち並ぶ。それに加え、カトリック神田協会や文房堂など、重要文化財も多数存在する。東方学会本館もその一つだ。文化と知性に溢れたアカデミックな街のイメージから、清水はコンセプトを「Tokyo KNOWLEDGE SITE」として、この街ならではの価値を定め、プロジェクトを推進させた。

Second

#02
現代に蘇る、大正モダニズム建築。

千代田区の景観条例をクリアしながら意匠を進めていくことが、このプロジェクトの大きな課題だった。最初に提出した企画案は、既存棟と増築棟との一体性が足りないという指摘を受け、考え直すことになった。「既存棟を保存しながら増築する建物としてのあるべき姿を検討して、表現しなければならない」。清水は既存棟に敬意を払い、大正モダニズム建築の意匠を現代風に再解釈。既存棟と増築棟の意匠に連続性を持たせ、質感の統一を図り、特徴を細部にも設えた。また、室外機等の機器が周囲から見下ろされないように和紙のガラススクリーンを導入。外観に細やかな柄を魅せるだけではなく、ガラススクリーン自体が明るく発光しているように見せ、柔らかくなった太陽の光が室内へと届くように施した。大正の歴史的建造物と令和の神保町の街並みが融合を果たし、プロジェクトは加速していった。

Decision

この街ならではの空間を創ること。

そこは高級なソファを設えた見栄えのするエントランスではない。そこは住民や来訪客などすべての人が居心地良く過ごせるエントランス。ゆっくり腰を掛けられる深い椅子。空間の中には木々が配置され、周囲の目が気になることはない。壁一面に設置された本棚。本棚には神保町に古くからある書店で選書された建築の専門書が150冊ほど並ぶ。「街ならではの過ごし方や暮らし方があると思っています。神保町は世界一の本の街です。この場所で本を通じた交流が生まれたらいいなと思っています」。様々な人が交わるエントランス。清水はここに、神保町ならではの交流と居心地の良い空間を創造した。

Third

#02
睡眠時間にこだわった、
現代の理想の暮らし。

居住空間は今の時代に寄り添いたいと考えていた。「近年、家で過ごす時間の増加に伴い、住空間への意識の変化がありました。過ごしやすさに徹底的にこだわり、睡眠意識の向上に焦点を当てました」。清水はマンションのセオリーである、共用廊下側に主寝室を設けることを辞め、朝日を浴びて目覚められるように、敢えて東側に広めの主寝室を配した。それは東向きの配棟計画ならではのアイデアだったが、前例のない挑戦的な間取りだった。また、全住戸ダウンライト実装で室内空間を落ち着きある灯りで包み、居室は睡眠導入のために調光ダウンライトを標準設置。洗面三面鏡に照明を仕込み、玄関は広く、収納を豊富にすることで、朝の目覚めから出発の準備まで、全ての時間が過ごしやすくなるよう、あらゆる工夫を施した。「歴史的建造物と都心の理想の住まいとの調和に挑みました」。清水の努力は実を結び、『レ・ジェイド クロス 千代田神保町』は、東方学会本館の文化を継承しながら、都市居住の新たな可能性を切り拓いた。

Construction

大正時代の歴史的建造物と、
令和時代の新しいライフスタイルの融合を。

大正時代の機能本位のモダニズム建築を現代風に再解釈し、連続性を持たせた美しい意匠。過ごしやすさを追求し、都市居住の新たな可能性を切り拓いた住空間。それはまさに「ここでしかできなもの」だった。清水を突き動かしたのは、日本エスコンが掲げる“ライフ・デベロッパー”と言う理想像。「東方学会本館への敬意と暮らし方への想いは、必ず伝わると信じて、プロジェクトを進めていました」。と清水は語る。
『レ・ジェイド クロス 千代田神保町』は、神保町という街に寄り添い、大正時代の歴史的建造物を守りながら、令和時代の新しいライフスタイルを確かに提供した。

After story

人の暮らしに寄り添っていれば、
常識に囚われなくてもいい。

『レ・ジェイド クロス 千代田神保町』は、初めて新築分譲マンションのメイン担当を任されたプロジェクト。既存の建物を保存しながらの増築プロジェクトは、日本では前例ないプロジェクトで、スタート当初は課題が次から次へと顕在化したことを覚えています。東方学会本館と繋がることの意義や、この神保町という街に相応しいものは何かを何度も話し合い、確認、検討を積み重ねて一つひとつ課題を解決していきました。そんな中で、東側に10畳の寝室を配置するとアイデアを発想しました。これはかなり挑戦的な間取りで、着工後も本当にこれで良かったのかと自問自答する日々を過ごしていましたが、モデルルームでお客様に「この間取りでもいい」ではなく、「この間取りがいい」と言ってもらえたことで、人の暮らしに寄り添っていれば、常識に囚われず、自由に発想していいと認められたように感じます。このプロジェクトが既存の建物の増築プロジェクトとして、日本の代表的なモデルになることを願っています。これからも地域特性やターゲット層を掴み、「ここでしかできないもの」について日々、検討していきたいと思っています。

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